特定健診データのエネルギー地形解析により肥満の有無による糖尿病発症前の経路の違いを解明
本研究のポイント
?肥満のある人とない人では、糖尿病へ至る経路に違いがあることを明らかにしました。
?富山県の特定健診データをエネルギー地形解析という手法で調べました。
?健康状態、中間状態、不健康状態(境界型糖尿病)の3つの安定状態が見つかりました。
?肥満の人は中間状態を経由する経路を取りやすい一方、肥満でない人は健康状態から不健康状態に直接遷移する経路を取りやすいことが分かりました。
?糖尿病の予防には、経路の違いに応じた適切な対策が大事であることが示唆されました。
研究概要
本研究では、健康な状態から未病※1)の段階を経て糖尿病※2)の発症へと至るまでの経路を明らかにするため、富山県で北陸予防医学協会が実施した特定健診のデータのうち4,928 名分を、エネルギー地形解析※3)という数理手法を用いて調査しました。その結果、一般的に知られている健康状態と不健康状態(境界型糖尿病※4)に相当)だけでなく、それらの中間状態も安定な状態であることが分かりました。さらに、肥満のある人は、 健康状態から中間状態を経由して不健康状態に至る経路を取りやすい一方で、肥満でない人は、健康状態から不健康状態に直接遷移する経路を取りやすいことも分かりました。これらの結果から、糖尿病の予防においては、経路の違いに応じて、内臓脂肪の減少や膵臓機能の保護といった適切な対策を講じることが重要であると示唆されました。
本研究成果は、「Frontiers in Endocrinology」に 2025 年 5 月 6 日(火)(日本時間)に掲載されました。
用語解説
※1)未病
健康状態と病気の中間。適切な対応によって健康状態に容易に戻ることができる。
※2)糖尿病
血糖値が慢性的に高い病気。新しい呼称「ダイアベティス」が提案されているが、本稿では一般的な「糖尿病」とした。
※3)エネルギー地形解析
多変量時系列データ解析手法の一つ。複数の状態間の遷移を調べることができる。
※4)境界型糖尿病
糖尿病の手前の状態。糖尿病予備軍とも呼ばれる。
研究内容の詳細
特定健診データのエネルギー地形解析により肥満の有無による糖尿病発症前の経路の違いを解明[PDF, 815KB]
論文情報
論文名
Energy landscape analysis of health checkup data clarified multiple pathways to diabetes development in obese and non-obese subjects
著者
Ryo Ito, Makito Oku, Iwao Kimura, Takayuki Haruki, Masataka Shikata, Tsuyoshi Teramoto, Daisuke Chujo, Minoru Iwata, Shiho Fujisaka, Yoshiki Nagata, Takashi Yamagami, Makoto Kadowaki, Kazuyuki Tobe, Shigeru Saito, Keiichi Ueda
掲載誌
Frontiers in Endocrinology
DOI
https://doi.org/10.3389/fendo.2025.1576431
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